「宇随さん、どうしますか? 降参します?」
雛は今までの戦いでは味わえなかった高揚感に満たされていた。
雛の中に眠っている剣士の血が騒ぐ。こんなにワクワクしたの初めてだ。
「誰に言ってんだ? 宇随様をなめるな!」
力を振り絞り、宇随は雛に猛攻撃をしかける。
雛はそれを楽しそうに受け流していく。「くそっ」
雛の隙を突きたい宇随は、懸命に雛の弱点を探していく。しかし見つからない。
宇随は悔しそうに呻いた。「俺はこんなところで負けられねえ……負けてたまるかあ!」
渾身の一撃を放つ。
打撃は与えられなかったが、初めて雛をわずかにかすめた。「へへっ」
宇随が嬉しそうに笑うと、雛の口の端が上がった。
「いいですね、まだまだ楽しみましょう」
この戦いを楽しんでいる雛を見て、げんなりした宇随がつぶやく。
「……嫌味かよ」
そして再びお互いの刃が交じり合うと、歓声が沸き起こった。
「もう無理! 降参っ!」
宇随が地面に大の字に寝ころび、叫んだ。
「え? もう? もっと楽しみましょうよ」
残念そうな雛を見て、宇随はさらにげんなりした。
「おまえ、マジで化け物だな……。もう勘弁してくれ」
宇随の体力はもう限界だった。
これ以上やっても雛に勝てそうにないと判断した宇随は、降参することを選んだ。宇随がいくら必死に攻撃をしかけても、打撃を与えることができない。
かすめることはできても、それでは相手のダメージになっていなかった。雛の攻撃を頑張って避けてはいたが、全ては避けきれない。ダメージが蓄積されていく。
雛の一撃はかなりの威力がある。それが重なり、体は既に悲鳴を上げていた。宇随はこれほどの剣士に会ったことがなかった。
いや、神威、あいつなら雛と互角にやりあえるかもしれない。 だが、それも予測だ。